Vol.20

災害時の経験 〈前編〉

今回は僕の経験からのお話を前編・後編の2部構成でお届けします。

2011年3月11日、東日本大震災が発生した当時、僕は人生を模索するため一旦歯科から離れ別の職に就いていました。発災から数日がたち、徐々に全容が明らかになってきた頃、災害支援活動に参加することを決め、宮城県石巻市にて倒壊した自宅や工場の瓦礫を撤去・掃除する長期の災害ボランティアに従事することになりました。

現地で被災された方にお話を伺うと、避難後はしばらく歯を磨くことができなかったことや、入れ歯の調子が悪くても我慢するしかなかったことなど、お口の悩みの相談を受けましたが、当時の僕は歯科から離れ実務経験が少なかったので的確なアドバイスもできず悔しい思いをしたことを覚えています。

災害時は水を節約する目的で歯磨きをしなくなる傾向があり、長期化するとお口の中が不衛生になり身体の健康に影響する可能性があります。特に高齢者は誤嚥性肺炎のリスクが増す心配があり、入れ歯の洗浄も大切です。防災の備えの中に、歯ブラシと洗口液、歯磨きシートなどの口腔清掃用品を加えることをお勧めします。

当時の経験から口腔ケアが心身に及ぼす影響の大きさ、その重要性を改めて感じ、予防歯科・予防医療に携わりたいと考えるようになりました。