Vol.73

孤食と認知症 社会的孤立は認知症のリスク

今回は認知症と歯科の関わりのお話です。認知症の治療や予防は未だ確立されておらず、年々増加する患者数は2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になることが推測され社会問題となっています。

認知症には、その発症のリスクとして12の危険因子が存在することが2020年に世界的な医学誌ランセットで発表されました。その中には、生活習慣病と言われる高血圧や糖尿病、過度の飲酒や喫煙、運動不足等がありますが、身体的なことだけではなく、社会的孤立というメンタル面でのリスクも含まれています。

この社会的孤立のリスク要因として関連が注目されているのが、歯の本数と孤食なのです。歯を失うとうまく話せなくなり、大きく口を開けて笑えなくなり、食べられるものが少なくなることで、人と会うことや食事を共にする機会が減り、孤食が増え、抑うつ状態に陥りやすく、社会的孤立が助長されてしまうのです。

日本のある地域での調査では、30%以上の高齢者が歯の本数が少ないにも関わらず入れ歯を使用していないという結果があり、入れ歯を使用していない高齢者の閉じこもりリスクは2倍になると言われています。逆に、入れ歯やブリッジ、インプラントなど治療を受けていると社会的孤立は改善傾向になるようです。

前述の医学誌では、これまで具体的に予防できるイメージがあまりなかった認知症が、12の危険因子を改善することで約40%予防できることが示されています。